秋の日のバイオリン
こんにちは。篠田のブログです。
芸術の秋ということで、今回は、それにふさわしい話題を。つまり、私にはあまりふさわしくない
話題ということになります。
毎日はスマホで日経電子版を読むところから始まりますが、最初に読むのは、「私の履歴書」
です。今月は、バイオリニストの前橋汀子さん。音楽のことは良く解らないけれど、読むと何故か
慄然として、仕事に気合が入ります。そういえば、うちに何故か古いバイオリンがあったなーと
いうことで、出してみました。子供がネットで検索すると、そこそこ値打ちがあるもので、がぜん
やる気が出てきました。残念ながら、弦が一本切れている。ここはDIYで張替よう、とさっそく
楽器屋さんにいってみると、G線、D線、A線、E線とあります。えっ、同じ糸じゃなかったの?
恥をしのんで店員さんに聞こうと思いましたが、店員さんのほうも何か知らん顔で近寄りがたい。
どうやら、音楽オーラが出ていないので上客じゃないというのを一瞬のうちに悟ったらしい。
すごすごと家に帰って、Amazonでセットものとチューナーや松脂を購入、2~3日ネット情報と
首っ引きで、正しい周波数が出るようになりました!私の場合、ここで満足して終わってしまい
ました。(えっ?)
注視していた家人も大体の結果は予測していたようです。前回は、和楽器バンドの千本桜に
感動して、家に置いてあった琴を弾こうとしばらく奮闘していました。そのときは、琴柱と
チューナーまで買って、「ラバウル小唄」まで弾けるようになりましたので、今回よりはまだまし
だったと言えましょう。「ラバウル小唄」は別に楽譜があるわけではなく、耳で覚えているのを
試行錯誤で糸を特定していくのですから、時間がかかりました。
芸術の秋ですね。
実感として、音は確かに波として伝わります。そしてこの現象は波動方程式として記述されます。
光もそうですよね。
ところが、熱現象は、拡散方程式という違うタイプの方程式で記述されます。熱の本質は拡散
です。
ところが、熱のシステムを電気回路で置き換えて適用してしまっている論文とかもありますよね。
あれは本当に正しいのかと。
「熱物性」で馬場哲也先生が連載されている「科学技術におけるデータベースの役割」の中で
解説されておりますが、電子は電場からの力をうけて移動するわけですが、熱は温度勾配の
ような「場」をうけて移動しているわけではありません。えっ、と思われた方もおりませんか?
良く、熱伝導率の説明に、材料の両端に温度勾配を与えたとき、温度勾配と熱伝導率に比例
して熱流が生じる、なんて説明を聞いたことはありませんか?何をかくそう私もその一人なの
ですが、これは原因と結果が逆ですよね。熱はあくまで拡散によって伝わるわけで、そこで
温度勾配という場がはたらいているわけではありません。
定常法は、決められた熱流を試料に流して、そのときの温度差を計測する、というのが本来は
cause-effectから言うと妥当かも知れません。(規格がありますので、弊社も含めて装置はそう
はなってはいませんが)
熱の本質が波で無く、拡散であるとすると、「温度波」ってあるの?という話になるのですが、
無い、という先生方もいらっしゃいますし、有るという方もいらっしゃいまして、少し微妙な話に
なりますので、これは学会での議論にゆずります。
これは、自分でも、簡単に計算で確認できると思うのです。半無限試料の片面にパルス加熱
したときの内部の温度応答は、グリーン関数で厳密解が与えられます。このパルス加熱を、
強弱をつけて繰り返したときの温度分布が果たして波として記述できるか、ということになり
ますね。
もし、波で無いとすると、大学時代に作っていたAC比熱測定装置は何だったのだ、という話に
なるのですが、AC法はLCAを使用して微小な交流信号を検出できる長所があります。そのため
熱刺激を小さくできますので、「材料が変化したこと」を検出するのには、大きなアドバンテージが
あると思います。例えば、温度や磁場や圧力を変化させて相境界を求めるような場合ですね。
「熱物性値」そのものの評価方法としては慎重な扱いが必要だと思います。あくまでこれは私
個人の意見ですが。
芸術の秋ということで、音楽は無理でも、せめて熱に関しては、じっくりと考えてみようと思う
今日この頃です。
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