2015年1月19日月曜日

フラッシュ法測定の極意~ピンとキリを抑える(1)

こんにちは、ネッチ・ジャパンの篠田です。

今回は、たまには真面目な記事をということで、“フラッシュ法による
熱拡散率測定の極意” について書かせて頂こうと思います。

私はネッチ・ジャパンの立ち上げまでは、ラボで材料の熱伝導率測定がメインで
担当しておりました。
お陰様で、たくさんのお客様にご導入頂いたのですが、その分質問も多く頂きます。
本当に試料の材質、形状もアプリケーションも千差万別で、それに応じてお答えも
限に変化するのですが、話が複雑であればあるほど、原理原則に忠実に回答
していると間違いがないようです。
いつも対応するときに念頭においているのは、せいぜい数項目です。

いくつか挙げさせて頂くと、、、

JISISOなどの工業規格を熟読する
JISISOでも非常に参考になる実践的なものを推奨します。
フラッシュ法ですとJISR1611が名著だと思いますし、断熱材ですとISO8301,8302
重要です。
規格というと堅苦しいようですが(私も最初はそう思っていました)、いろいろ
経験をつんでいくと、先人の試行錯誤の苦労の結晶だということが解ってきます。

・メーカー独自の特長を抑える
JISとかですと、どこのメーカーのユーザーでも困らないように配慮する必要が
あるようですので、規格はベースとして押さえつつ、さらにこの装置ではここまで
できますよ、というアドバイスをしていきます。
孫子風に言うならば、工業規格は「正」、自社の特長は「奇」ということになる
でしょうか?

・標準試料
これは産総研様の熱物性標準研究室のウェブサイトを参照して下さい。
国家標準で装置を検証して、値が標準試料の推奨値以内に入ると、その装置は
“国家標準へのトレーサビリティーがとれた装置”ということになります。

他にも、1次元の熱伝導に近い状況にもっていくなどありますが、重要なのは
ピンとキリを抑える。ということです。
これはどういうことかと申しますと、どこまで測定出来てどこまで測定できないか、
それをしっかり押さえておく、ということです。
なんだぁ~と思われるかも知れませんが、それをはっきり言ってくれる装置メーカー
があまりいないのです。
とりあえず、測ってみましょう、そういわれる皆様も多いのではないでしょうか?
時間とサンプルの無駄遣いにならないと良いのですが...

私共がフラッシュ法で問い合わせを受けて、これこれの試料を測定できますか?
と質問を受けた場合は、それはできます!できません!と、はっきりお答え
いたします。(できるできないの境界では、注意事項はいろいろ増えますが...

その判断基準となるのが、熱拡散時間(または熱拡散の特性時間)と呼ばれる
熱物性値です。


次回は、熱拡散時間から詳しく説明させて頂こうと思います。


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2015年1月5日月曜日

新年のご挨拶と熱測定のお話し


 

新年明けましておめでとうございます。
本年も何卒宜しくお願い申し上げます。
 

いろいろと苦労はございましたが、2014年は皆様の温かいご支援を頂きまして、
小さいわが社ながらも順調に発展の機会を頂きました。
至らぬ点も多くございますが、本年もご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。
 

さて、大型連休で久しぶりに時間ができましたので、若いころに読んだ漱石の
草枕など読み返したりしていましたが、若いころに読んだのと、人間五十年、
下天のうちをくらぶったのとでは多少感じ方が違います。
いきなり、「とかくに人の世は住みにくい」と書いてあるのに(そうだ、そうだ)
実感する度合いも、意味合いも違います。
漱石が生きていた時代は、徳川260年の大平の世が終わって、西洋列強の植民地に
ならないよう、高温多湿のわが国の風土に合わない背広や革靴を無理やり身に着け
させられて、それはそれで住みにくかったでしょうが、21世紀社会の住みにくさには
比べるべくもない。

それを克服するために、世の英才たちが日夜努力しているのだと思いますが、
その律速となっているのが人の心の処理能力と、熱の問題だと思うのです。
前者の議論はアーサー・ケストラーのホロン革命などに譲るとして、熱の問題は
我々熱測定に携わるものにとってより直接的な話です。


ところで、お使いのパソコンのCPUのクロック周波数、いくつですか?2GHz? 
30年前に学生のころに使っていた往年の名機種PC9801VX2110MHz(ぐらい?)
だったかな?200倍です。

CPUのクロック周波数を上げると処理能力は上がりますが、それに伴って発熱量が
急速に増大します。
この熱をいかに迅速に逃がすか(放熱といいます)、そのような材料を開発するかで、
メーカーがしのぎを競い続けています。
むしろ放熱の技術が追い付かないために、エレクトロニクスの性能が上げられない
いる、といっても過言ではありません。

この放熱性能を評価するもっとも重要な基礎物性となるのが熱伝導率です。
高熱伝導率材料の測定方法として最も信頼性が高く普及しているのがフラッシュ法で、
我が社の主力製品のひとつです。


熱を逃がすのが大切ならば、熱を逃がさないのも大切です。
いわゆる省エネです。
徒燃草に「家の作りやうは、夏をむねとすべし。冬は、いかなる所にも住まる。
暑き比わろき住居は、堪へ難き事なり。」なんて書いてあるのは徒燃草ファンの
私と言えども、暴論じゃないかなで、兼好法師は絶対この段を夏に書いたのじゃない
かな、と思ったりしてしまいます。
寒い冬、刻一刻温かい屋内から外へ逃げていく熱の量は、内外の温度差と壁の熱伝導率
と壁の厚みの逆数に比例します。
熱伝導率の低い、厚い断熱材を使うと省エネ住宅になるのはこのためです。

このような断熱材の熱伝導率を評価するのに最も良く使われているのが、GHP法や
熱流計法といった定常法の装置で、これらも我が社の主力製品のひとつです。

熱は安全とも深く関わっています。
大は化学プラントなどで、小はリチウムイオン電池などで爆発事故が起きたりするのは
熱暴走反応で、これを小規模で危険性を評価するのが加速速度熱量計、いわゆるARC©
です。(ARC©NETZSCH社の登録商標です)


ロケットなどの安全な飛行にも、高温の熱物性に関する詳細な知識が不可欠です。

最後に、東日本大震災にともなう福島原発事故。
まことに痛ましい出来事で、そのときの私の心情を表すには、「誰がために鐘が鳴る」
の冒頭の一節の他にはありませんが、よく知られているように、あのときに起きたのは
核爆発ではなく、水素爆発です。
高温の水蒸気が核燃料の被覆材料であるジルコニウム合金(ジルカロイ)と反応すると
水素が発生します。
この水素の発生挙動は、水蒸気雰囲気で測定できる特殊なSTAと、QMSをカップリング
した装置により詳しく調べることが出来ます。
この結果では一般に言われている1200℃よりもずっと低い温度で水素が発生する結果が
得られていますもう2度とこのような事故が起こらないようとする取り組みに、少しでも
貢献できればと思います。


このように現代社会のかかえる熱の問題の解決を裏方で支える意気込みを忘れないよう、
鋭意努力していきたいと思います。

本年も皆々様宜しくご指導ご鞭撻のほどお願い申し上げます。

 


平成2715

 



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