2015年6月11日木曜日

シミュレーション ~リアリティーか妄想か~

今回の話題はシミュレーションです。
シミュレーションというと、フライトシミュレーターとか、シミュレーションゲーム(SLG)とかを連想します。

皆さんは、SLGをやったことありますか?

高校時代は、PCが普及する前で、ボードウォーゲームが熱狂的な一部のマニアの間で
流行していました。アバロンヒル社のシリーズが有名で、私もおかげで勉強が破壊
されました。いろいろな戦果判定表の諸元を計算しながら、補正係数を考慮しつつ
サイコロで判定するので大変です。それが、私が大学生の頃に、エレクトロニクスの
驚異的な発展とあいまってコンピュータ化され、“コンピュータ”シミュレーション
ゲームが爆発的に普及しました。

光栄(現コーエー)の信長の野望、三国志、ジンギスカン、提督の決断のファースト
出た頃で、研究室の先輩共々かなりはまったものでした。コーエーも、ニンテンドー
同様にブラックな開発歴史をもっていますが(タイトルが出てくれば相当の“通”
です)、これら初期のシリーズは、ある意味最新版以上にリアリティーに富んでいま
した。三国志の「美女を略奪」コマンドや、提督の決断に「慰労」コマンドがある
なんて、今から考えるとありえないですよね。ジンギスカン(蒼き狼と白き雌鹿)
にいたるや、相手の国の妃を奪ってむりやり後宮に入れて子供をつくらせるのです
からね。まあ、史実では確かにそうだったのですが。中には絶対なびかないお妃様
もいて、バイナリデータをのぞくと「絶対拒否」と書いてあったので納得。

それはさておき。
何が、これらのゲームが人を魅了するのか? 

ウォーゲームの進化と共に生きてきて思うのは、飽くなき仮想空間でのリアリティー
と、「たら、れば」こうしたら、こうすれば歴史はどうなっていたか?
ということを試せることにあると思います。
ミッドウェイ海戦で日本が勝っていたら、雷爆転装せずに、直ちに攻撃隊を発進させて
いたら、と誰でも思ったことはありますよね??

では、リアリティーをもたせるためにはどうすれば良いか?
シミュレーションゲームで遊んでいるうちは罪はありませんが、これを実際に工業製品
の製造過程の最適化や、化学物質の危険性評価、果ては原子力やロケットの安全性と
なると、間違えば首がとぶ、切実な問題になるわけです。

熱という立場から申し上げますと、最も重要なことは熱物性、熱伝導率や比熱容量や
熱膨張係数、弾性率などのデータを、シミュレーションするスケールにおいてしっかりと
抑えておくことです。いくらスーパーコンピュータで精緻な計算を行ったとしても、
これらのデータの不確かさが大きかったら何にもならない。

昔、JAXANASDANALと宇宙研だったころ、日本のロケットは良く失敗していました。
とにかく良く落ちた。また税金の無駄遣いだ、と良く国民の批判を浴びていました。
ロケットの信頼性を高めるには、構造材料の熱物性を把握しなければならない、
そういう高い見識の意見があって、かなり徹底的に測定されたと思います。NETZSCH
外国企業(当時は日本法人すらなかった)ながら、ラウンドロビンテスト参加して
2400℃もの熱物性測定を行った記憶があります。JAXAはかなり成功している思います
が、熱物性の研究がその礎の一つになっていると思います。シミュレーションする
スケールにおいて、とちょっと断りましたが、例えば、デバイスの熱評価をするのに
バルクの熱物性を用いると間違えます。

Moのような金属薄膜でも、100nmレベルになりますと1/5近くに落ちます。一方、
昔爆発死傷事故を起こしたゾアレンですが、mgオーダーのDSCの評価からだけでは
爆発のプロセスは解らない。有限のスケールと熱物性、環境との熱交換係数などを
考慮して初めて現象を再現することができます。球体の場合、中心からではなく内部
球殻のあたりが最初に熱暴走をおこすことが解ります。

熱物性と同様に重要なのは、現象をモデル化するプロセスです。
当然ながら、熱伝導方程式、物理法則にのっとってモデル化すべきではないか?
当たり前のことのようですが、最近では、システムを電気回路でモデル化して、それで
熱的現象を解こうとするアプローチもあります。それはそれで利点はあるけれども、
あくまで簡便法です。熱伝導方程式の裏付けがなければ、極言すれば「砂上楼閣を築くが如し」だと思います。私が、熱伝導率の測定方法として、定常法やレーザフラッシュ法に最も信頼を寄せるのは、これらにしっかりと根ざしているからです。

そしてさらに、私は門外漢ではあるけれども、数値計算によるところの誤差も考えなけ
ればならない。

さて、皆さんが、今行っている熱のシミュレーションはリアリティーか妄想か?
良く検討した方が良いと思います。


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