2017年4月11日火曜日

ACカロリメーターの話

わが社は熱伝導率測定装置を得意としておりますが、主力となるのはフラッシュ法と、
断熱材のための定常法(熱流計法、GHP法)です。また、耐火材のための熱線法の
ラインアップも古くから持っています。

ところが最近では、その他にもいろいろな熱伝導率測定方法が出てきて、どれが
すぐれているのか困ることがあるかも知れません。特に周期的な熱刺激を与えて
その応答から物性を計測するタイプが近年目立っているようです。
 
それに関連して私の経験(思い出?)をひとつ。
 
実は、私自身、大学ではこの交流の熱刺激を与えて物性(Cp)を計測する装置の
開発がメインで、私が熱測定の世界に足を踏み入れるきっかけとなりました。
実は交流から入っているのです。いわゆるACカロリメーターといわれるものです。
具体的には、ハロゲンランプの光をチョッパーで切って、強度が周期的に変化する
光に変換します。これを窓つきクライオスタット中の薄膜試料の表面に当てます。
(クライオスタットは極低温まで下げられて、かつ磁場中にも設置できます)試料裏面
には、1/1000インチの極細の熱電対をとりつけて(自作!)、交流の温度変化をロック
インアンプで計測します。いろいろな条件をみたすと、厳密解が簡単になって、ロック
インアンプの出力が試料のCpと周波数に反比例します。これにより、相転移近傍での
Cpの変化を磁場と温度に対して計測することができるというものでした。もう30年近く
さかのぼり話で記憶が定かではないのですが、ロックインアンプはPar. Model124A
というやつで、アナログロックインの最高級品だったと思います。デジタルも試し
ましたが、デジタル素子自身がノイズ源となって、うまく計測できないのです。
自分で旋盤を回し銀ろう付け、熱電対もソフトもN88ベーシックで自作、何とか
卒研1か月前に、Dy(-Y合金単結晶)Cp2次相転移のピークがきれいに測定できて
「おおー」と感動しました。
 
ところが! 1次の相転移が見えない(T_T) 研究室のテーマが、希土類金属の1次の
相転移のダイナミックスでしたので、これは致命的でした。
 
卒論発表は、M教授から、ACカロリメトリはCpの絶対値はあてにならないし、
補正項が無視できるのは相転移近傍だけなので、断熱法に比べて使い物にならない、
と言われるは、米沢富美子教授や近角聡信名誉教授に厳しい質問を受けて答えられ
ないはで、さんざんでした。つくづくアカデミックな世界は自分は向いてないなと
痛感した一瞬でした。ただ、先輩からは、位相成分も測れば熱伝導率を出せるよねー
と言われたものの何のことか解らず、そのままだったのが悔やまれます。どっちみち、
Par. Model124Aでは、位相情報も計測するにはBCDコード(!)を駆使せねばならず、
GPIBRS232Cにわか勉強の私には手におえるしろものではありませんでした。
 
長々と私のつらい思い出について書いてきましたが、AC法の良い所は、与える熱刺激
小さいことだと思います。また、ロックインアンプを用いて微小なシグナルを検出
できますので、相転移近傍の微小な変化を追うのには非常に適しているのではと思い
ます。また、装置が比較的シンプルで、安価で制作可能です。
 
但し、そのような長所は認めるものの、熱物性として絶対値がどの程度確からしいか、
その点は長年疑問に思っておりまして、産総研の名誉リサーチャーの馬場先生にお伺い
する機会がございました。大変含蓄のあるご教授を頂いたのですが、私のブログなんか
にのせるのは申し訳ない。不正確になってしまいます。ひとつお伝えさせて頂くと、
フラッシュ法では、パルス光刺激による応答関数を実際に計測しており、それに
含まれる情報は非常にリッチである、と。いかがですか?
 
幸い、今年6月に熱伝導率基礎講座を開催する際に先生に特別ご講演を頂けることに
なりました。統計熱力学をベースとした熱物性測定と、最新のデータベースマテリアル
インフォマティックスに関する話題もご提供頂けるということです。基礎講座とはうたいつつも、
気づかれたヘビーユーザーの皆様で埋まってしまうかも知れませんね。
 
さて、前回のシンガポールの観光ネタと一変して、ブログすべてが熱測定の話という
記念すべき回になりました。シンガポール行きたくなった方もおられるようですが、
大検証という言葉も検索しておいて下さいね。昔戦争中にシンガポールに進駐した
旧日本軍の近衛歩兵第4連隊のM氏という方から直接お聞きしたことがあるのですが、
日本軍が占領後、英国に味方した中国系の住民を、やはり地元民に選別させて粛正する
命令が出された。その方の小隊にも500人ぐらい当てがわれたそうです。
悪名高い辻正信が出したと言われています。
 
ところがM氏は、そんなことはやめようや、とこっそり全部逃がしてあげた。
憲兵から重営倉に入れられるかとひやひやしていたそうですが、憲兵も粛正は嫌だった
らしく、おとがめは無かったそうです。逃がされなかった人たちも当然いるわけで痛ましい
ことです。
 
シンガポールといえば、ジットラ・ラインの突破、島田戦車隊や銀輪部隊、加藤隼戦闘
機隊の活躍や、戦艦プリンス・オブ・ウェールズ、レパルス撃沈といった華々しい緒戦
の勝ち戦しか知らなかったので、大変衝撃的でした。
 
さて、話戻りまして、熱伝導率基礎講座、6月に横浜と名古屋で開催させて頂きます。
 
日頃の感謝の意味をこめまして参加費は無料とさせて頂いておりますので、
是非この機会をお見逃しなくご登録の程を宜しくお願い申し上げます。

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